◇俺はビッグだ◇ 3.31セルジオ越後も言っている通り、ウラワはJリーグで最もビッグクラブに近い存在であり、もはや勝利を義務づけられた存在になろうとしている。僕も、ウラワがグランデと呼ばれる日が来るのを首を長くして待っている一人で、その為に一生懸命応援をしている。周りを巻き込もうともしている。 では、ビッグクラブとは何なのか。考えつくものを挙げていくと、 1.圧倒的に強い存在でなくてはならない。少なくとも毎年リーグ優勝を争う程度の力がなくては駄目だ。 2.沢山のお客さんが入るチームでなくてはならない。また、それを受け入れるだけの器、スタジアムを持っていなければならない。 3.金銭的に恵まれていなくてはならない。親会社の資金力は勿論、大きなスポンサーを多数集められる営業力と魅力が必要だ。 4.そして、なるべくなら首都に限りなく近い立地になくてはならない。いくら上記を満たしていても、それが国の中枢機能がある場所から遠く離れた場所にあっては、なかなか。 世界的にビッグクラブと呼ばれるのは、ACミランやレアル・マドリー、マンチェスターユナイテッド、FCバルセロナ、ユベントス、まあ他にも沢山あるだろうけれど、特にヨーロッパはチャンピオンズリーグがあるから、ここに出場出来るレベルのクラブが大まかに言えばそれに該当するだろう。ウラワは、1.で示した圧倒的な強さという所を除いては、ほぼビッグクラブになれる要素を持ち合わせている。サポートに関しても他を引き離して圧倒的な優位に立っているし、Jで他にこれらの要素をある程度持っているのは、FC東京と横浜マリノスくらいだろう。 Jで強さを見せてきた鹿島アントラーズやジュビロ磐田は、結局の所地方クラブの域を出る事は無い。プロヴィンチアと呼ばせて貰って差し支えないだろう。 ウラワをサポートする方々がどの様な考えを持っているのか定かではないが、個人的にはウラワがもっともっと大きなクラブに成長して欲しいと願っている。また、僕らにしかそれが出来ないとも思っている。代表である犬飼氏は、かなり性急に過ぎるきらいがあるけれど、それでも彼の考え方には賛同出来る事も多い。さいスタでホームゲームを全試合開催して、それが全て5万人を超える観客の下で行われれば、その時点でウラワは全く違った次元のクラブチームへと変化する。代表選手を多く抱え、世の中の注目度を上げる事にも成功している。それが純然たる強化に繋がるかどうかは別問題としても。 ウラワはどんどん大きくなろうとしているし、僕はその考え方に、基本的に同意する。 まだまだ強さを誇れるチームじゃないから、自らをビッグクラブだなんていうのも気恥ずかしいものだけれど、実際ウラワが勝ちだして毎年リーグ優勝を争うチームになったその時は、既にJのレベルを超えたフットボールクラブになっている筈だ。満員に埋め尽くされた埼玉スタジアムで、得点が入る度に、ゴール裏だけではなくバックスタンドもメインスタンドも総立ちになり声を上げる。そこかしこからチャントが聞こえ、グラウンドでは見ているだけでクラクラしそうな美しく勝利するフットボールが繰り広げられる。アジア市場へも積極的に進出し、チャンピオンズリーグを勝ち取り、中国で韓国で、シンガポールで、ウラワのレプリカが飛ぶように売れる。僕は、そんな時代が来るのを楽しみにしているし、そこを目指して動くクラブを応援できる事を楽しんでいる。世界に輝け。 まあ少なくとも、自チームの選手から「ホームなのに相手チームのホームゲームみたいだった」と言われてしまうようなクラブチームには、一生ビッグクラブなんて語る事は出来ないだろうな。なりたくもないだろうけど。 ◇魂◇ 3.30別に、他チームのサポーターがウラワに対してどんな考えを持っていようが、それはどうでも良い事なのだろう。でも、余り気が長い方ではない僕は、あるサイトでウラワが馬鹿にされているのを見て、やっぱり腹を立ててしまった。まあ、馬鹿にされているというのは適切な表現ではないかも知れない。そこにはただ、今までウラワが記してきた歴史を紐解き、如何に僕らが辛酸を舐めて来たかをご丁寧に説明する文章があった。そして、ウラワは今週末の試合でまた地べたに這いつくばり、今までと同様の歴史を繰り返すだろうとする、文章があった。 読んでいて少しだけ腹が立ち、ページを閉じて考えをくゆらす内にその怒りは増幅されて行った。しかし、少し時間をおいてまたその文章を頭に浮かべると、意外にも憤る感情は徐々に薄れて行き、最後にはその対象を哀れむ気持ちさえ生まれてきた。 結局の所、自分のチームに対して勝利のみを追い求めるだけでは、何も生まれないのだ。確かに僕たちはしたくもない経験を嫌と言う程味わってきたし、どちらかと言えば下の方を歩く事が多かった。希に神風が吹いて上位進出をする事もあったけれど、それが長く続く訳でもなく、行ったり来たり精神的にも安定感を持つのがとても難しい時間を過ごしてきた。ただ、そんなチームを応援していながら、弱いからサポートを止めようとか、勝てないから違うチームを応援しよう等という考えはこれっぽっちも浮かんで来なかったし、それは今後も変わらない。そして、そう考える人達が他のクラブよりも圧倒的に多いのが、ウラワの特徴であり、誇りでもある。 そりゃ、磐田のフットボールは美しいし、強いし、更にクラブとしての歴史もある。ウラワがそういったスペックで勝っている所は無いかも知れない。でも僕は、ウラワが日本フットボール史上唯一無二の存在であると信じて疑わず、きっとそれは真実だ。“We are Reds!”と心から叫ぶ事の出来る喜びを理解している人の多さが、それを証明している。勝利し続ける事はフットボールクラブとしてとても重要な事柄だけれど、実際それだけで歴史は作れない。そして、ウラワは既に勝利以外のに於いて、どのクラブとも比較する事の出来ない程の、ぶ厚い歴史書を編纂してきたのだ。 だから、今度の試合に勝とうが負けようが、それは余り大した意味を持たないとここで断言しておく。歴史の大きな流れは、もはや誰にも止められない所まで来ているのだ。ウラワは今後も成長し続けるし、それを抑止する力はどこにもない。弱いからと馬鹿にされようが、そんな他愛もない事を気にすることの方が馬鹿馬鹿しい。ウラワは、ただ前へと邁進するのみだ。 ◇じっくりね◇ 3.29まあ、あれだ。じっくり行きましょうや。僕らが焦ったって急にチームが強くなる筈もなく、選手達や監督、コーチが前に進もうと努力している以上、僕らは応援するしかないんだ。確かに大分戦は、聖地駒場で大分相手にお世辞にも良いフットボールとは言えない内容で完敗したのだから、サポーターが憤るのは当然だと思う。僕だって、大分に負けた事実ははっきり言ってショックだし、試合の後も全く気分が優れなかった。 それでも、現実的に考えてみれば、ウラワがこれから少しの時間迷走を続けるのは想像できる範疇の事であるし、それは僕らが我慢しなくてはならない時間だとも思う。去年のシーズンが終わった後、オフトとヤンセンがチームを去り、ギドとエンゲルスが新たにチームを率いる事になった。その時、オフトの事を少なからず信頼していた僕は結構な不安感に苛まれ、来るシーズンにウラワがどんなフットボールを見せてくれるのか想像も出来ず、次々と発表される大型補強に沸くニュースを見ながら、どこか煮え切らないものを感じていた。 あくまでもギドだから、僕らのアイドルであるギドだから、一応の成功を見せたオフトの後を継ぐ彼が失敗する姿を見たくなかった。また、彼を監督に指名した代表に対しても、何だか馬鹿にされた気がして心持ちは良くなかった。 年が明けてキャンプが始まり、色々な媒体でギドのコメントを目にする様になって、彼がどんなフットボールを目指すのかが判り始めた。オーストラリアで行われた練習試合の情報が断片的に耳に入ってくると、今期は恐ろしく攻撃的で新しい戦術をチームに導入するらしい事が伝わってきて、熊谷ではそれがかなり明らかになった。甲府との試合では、チームとしてそれ程有機的に動けていた訳では無かったけれど、どんな方向性でチームを導こうとしているかという形は見えてきたと思う。ウラワに在籍する攻撃的でスピードのある選手達を最大限に生かそうとするそのベクトルを、僕は好意的に受け止めた。開幕を前に、僕の胸にかかった靄は徐々に晴れて行き、ギドが率いるウラワの姿を楽しみにする、何時も通りの気持ちになって行った。 開幕してから3戦、連携は良くなっている部分もあるし、未だ整備されていない組織もある。相変わらず幾人かが代表に呼ばれて全員が完全に揃った練習は出来ず、選手個々のフィジカルにもかなりの差がある。ギドとエンゲルスが描くフットボールは、昨年までオフトが行っていた限りなくソリッドなそれとは全く異なり、選手全員が統一された意識の下、攻守両面でとても流動的な動きを要求される。それが出来て初めて、ウラワの“超”攻撃的フットボールは完成の域に近づくのだと思う。だから、今は必死にもがいているのだろう。 恐らく、今のウラワが目指すフットボールがフィットしていくにつれ、その攻撃力は破壊力を増していくだろうと思う。それが、どの程度のレベルまで引き上げられるのかは定かではないけれど、僕はとんでもない高みに到達する可能性だってあると思っている。選手個々の力量はもとより、ウラワには“ビッグクラブ”にならなければならない宿命があるのだから。到達しようとする場所が高ければ高い程、産みの苦しみは大きくなる。昨年、カップウイナーになる為に2年の月日を費やした。その積み重ねがあるとは言え、今年は新たな監督を招き、新たな選手が加わり、新たな戦術で挑んでいるのだ。これから迷走を続けるかも知れないその間、ウラワが初めての経験をするだろうその時まで、サポーターにも何かが求められている。取りあえず今は、その何かを考える事にしよう。 ◇疲労困憊◇ 3.27こんな、精神的に疲れる試合が少しの間続くのだろう。ウラワが試合をコントロールして、自ら主導権を握ったまま90分を過ごすのには、少なからず時間が必要だ。先週のセレッソ戦で、2失点を喫しながらも逆転勝ちを収めてそれなりにやれる手応えを見せたから、僕も少し焦ってしまっていた。開幕前に考えていた通り、山あり谷あり、こういう経験を積みながらチームは少しずつ成長して行く。まだ一回もフルメンバーが揃って練習していないのだし、フットボールはそれ程甘くは無いと思う。 もう、色んな所で今日の戦術的な話は出ているから、僕が上書きする必要も無いので簡潔に思った事を。結果論で言えば、ギドは選手の配置をいじり過ぎたと思う。坪井の代役に、スピードのある平川を抜擢して、その平川が抜けた中盤左サイドに酒井をスライド、そして酒井の所には戻ってきた啓太を置いた。左ウイングには達也が入って、見た目には前節までと変わらない3−4−3という布陣だったけれど、この配置変更がチームの硬直化を招いた。 開幕してから2試合、3トップとは言っても3人がこなす役割は結構異なっていて、右サイドの永井はかなりタッチライン沿いに張ってウイングらしい仕事をする一方、左サイドのアレックスは中央に絞りサイドにスペースを創出した。アレックス自体はそれ程調子が良かった訳ではないけれど、彼が作ったスペースを、平川や、時にはエメルソンが有効に使う事により、左サイドでのチャンスメイクはかなり機能していたと思う。だから、相手のディフェンスはウラワの左へと注意が流れ、右サイドで永井がフリーでボールを受ける回数が増えて行って、バランスの取れた攻撃になっていた。また、今期好調に見える平川が、アレックスをどんどん追い越して行くプレーをする事が、必然的に縦のポジションチェンジを増やして、攻撃の活性化・流動化を推し進める原動力となっていた。 それが今日は、立ち上がりからウラワの動きが悪かった。3トップの一角に入った達也はタッチラインに張り付き、酒井は前にスペースが無く、また自らのプレースタイルから追い越す動きがなかなか出てこない。勿論早くに2失点してしまったから、バランスを取るのに必死だったのだろうけれど、やはり攻撃時に中盤が能動的に動き出さなければウラワの狙う攻撃が上手く行く筈が無い。 また、大分の組織だったプレーは見事の一言に尽きる。瀬戸という、失礼ながら僕は全く知らないセンターバックの選手は、キックの精度などを見るとお世辞にもJ1のレベルには達していなかった。しかし、彼は90分間途切れる事無く、何度ウラワに押し込まれても必死に高いラインを保ち続け、非常にコンパクトな陣形を崩す事は無かった。その押し上げ方はヒステリックな程で、無謀とも思えるラインコントロールだったけれど、結局ウラワは彼らが行った中盤のスペースを消すという戦術にまんまとはまり込んでしまったのだ。 翻ってウラワのディフェンスは、ラインを作るべき時に誰かが余るポジションにいてオフサイドを取れず、余るべき時にはラインになってしまいあっさりと裏を取られる事を繰り返した。今までの2試合では、ディフェンスラインの前方に脅威の活動量を用いて綱渡り的なバランスを取っていた酒井がいた。しかし、この試合で彼が左サイドにいた事も、相手にディフェンスの裏を狙わせる要因になっていたと思う。どうしても前方のスペースにアタックしてしまう啓太には、酒井のバランス感覚を真似る事が出来なかった。まあ、まだ1試合しかしていないのだから、それも仕方のない事だけれど。 ウラワは負けるべくして負けた。大分は、プロヴィンチアのアウェーゲームとしてほぼパーフェクトの内容だったし、ウラワはまだまだチームになっていない。それでも一時は2点差を追いつくパワーを見せてくれた。悲観すべき現実はそこには無い。選手達は、慣れないシステムと、合流して間もない五輪組をどうにかフィットさせようと必死になっているのが感じられたし、前に進もうという気持ちは伝わってきた。失点にしても、ディフェンス云々というよりはチーム全体の問題であり、仮にディフェンスラインに人が戻ってもすぐに改善されるというものでも無い。繰り返すが、チーム作りには時間が掛かるのだ。 負けた原因を選手や監督のせいにするのは簡単だから、ついスタジアムでもそれが味方選手への野次やわざとらしい大きなため息に繋がってしまう。ただ、僕らのすべき事はそんな事では無い筈だ。今日だって、試合前から何だか緩い空気がクルヴァにも漂っていて、それは試合後まで払拭される事は無かった。死ぬ気で応援していない奴が、選手を罵倒するのは許されるべき事では無い。金を払って見に来ているのだから、等という理論は詭弁に過ぎないのだ。酸欠で頭がぼーっとする位声を出し、飛び跳ねすぎて足が攣る。少なくともクルヴァでは、選手と同一線上で戦って欲しい。罵倒している暇はない。シニカルな笑顔を見せる暇はない。 何にせよ、時間が必要だ。 ◇ナビ杯1試合目◇ 3.25もう、明後日に控えるナビスコカップ予選リーグ。日曜開催の翌週は、時が経つのを早く感じる。明日さえ乗り切れば、そこにはとても刺激的な時間が待っているのだから。 今期のナビスコカップは、ウラワにとって前年の覇者として参加する初めての大会だ。カップを守る立場で試合に挑むという経験を、漸く積む時が来た。覇者としてだけでなく、強大な補強を敢行して代表選手を多数抱え、今年は完全にマークされるチームとなったウラワが、ナビスコではどんな戦いを見せてくれるのだろうか。 相手となるのは、昨年ぎりぎりでJ1残留を果たした大分。今期は前節で瓦斯を破るなど、去年とは違うチームという所を見せている。システムは、極めてオーソドックスな4−4−2、もしくは4−5−1。センターフォワードに入るマグノ・アウベスが、キーパーソンとなるのは間違いない。Jでは2試合連続ゴールと、Kリーグでの経験を生かしてか、結果を出してきている。きちんと見た訳では無いけれど、ゴール前でのポジショニングが良さそうで、エメとはまた違ったタイプのストライカーだろう。去年もチームを引っ張った吉田孝行は、セカンドストライカー的なポジションに入り、多くの時間帯チャンスメイクに徹している感がある。中盤の左サイドには五輪代表の根本が居て、ボランチには元オランダ代表で強烈な左足を持つリカルド・ビチュヘが陣取る。 と、こう書いてみても、タレントだけを見るとウラワが負ける事を考えるのが難しい。殆どの選手が、それぞれがどんなプレーをするのか思い浮かべるのさえ困難だし、取り立てて特徴的な選手が居る訳でもない。ただ、だからといってウラワが確実に勝利出来ると言えないのがフットボールの面白い所で、大分が前節勝利をもぎ取ったのだって、フロックでも何でもない。昨年の対戦を考えても、ウラワは大分に2勝しているけれど、何れの試合も失点している。特にファーストステージの駒場では、吉田孝行に見事なヘディングで先制ゴールを許しているのだ。 前節の瓦斯戦で大分は、高いラインを保ちサイドからの早い攻めを中心に試合を組み立てた。結果的には逆転で勝利を収め、それなりに自信を持ってウラワとの戦いに挑んでくるだろう。選手の層が厚いとはとても言えないけれど、ベルガー監督の下組織的に組み立てられたチームになっていると思う。ポゼッションに手間取ると、嫌なカウンターを受けるかも知れない。 ただ、ウラワはもうこんな所でもたもたする様なチームではない筈だ。比較できない程レベルの高い個人能力は勿論の事、試合を重ねる毎に少しずつ良くなってきた選手間の連携で、攻守共に圧倒するゲームを見せてくれるだろう。坪井とアレックスはいないが、それを補って余りある選手層が今年のウラワにはある。ディフェンダーが多少薄いけれど、そんな些細な事は圧倒的な攻撃力で覆い隠してしまえば良い。そして、相手を迎える場所は駒場なのだ。僕らが作るあの独特の雰囲気の中、アウェーチームが勝とうとするのは極めて難しい。相手の事を考えるでも無く、僕は威風堂々と何時も通りのサポートでチームを後押ししようと思う。 ◇極めて攻撃的に◇ 3.24とあるサッカー雑誌で、ウラワの番記者が今期のチームを見て“極上の攻め、拙い守備”という表現を使っていた。まあ、的はずれな意見では無いけれど、今の所僕はそう思わない。まだまだ“極上の”という枕詞をおくには物足りないのだ。ピッチを見渡して、ベンチを眺め、このタレント達が奏でるフットボールは、こんな輝きで満足する筈が無いから。 例えば、前線に人数を掛けて攻め入る割には、中央でのパス交換は少なく、パス&ムーブで抜け出そうという動き出しも少ない。最終的にサイドへ展開して、センタリングで攻撃が終わる形がまだまだ多い。ウラワの場合、選手のキャラクターを考えれば非常に質の高いボールが入らない限り、中央で競り勝つ可能性は低い訳で、実際クロスから得点に繋がったシーンは一度もない。逆に、サイドで相手ディフェンスを抜き去って、直接ウイングがシュートする形が得点になっている。シーズン前の甲府戦は2点ともその形だったし、セレッソ戦では永井が何本かその形でシュートまで持ち込んでいた。これは、あくまでも個人の力による所が大きい。相手のディフェンスを完全に抜き去らないと形にならず、攻め手として持つには十分すぎる手段であるけれど、実効的なものかと問われればそうでも無い。 勿論、3トップの陣形を採るのだから、サイドの攻撃的な選手がドリブルでペナルティーエリア内へ切れ込み、それが決定機を生み出す事が増えてくるのは間違いない。ただ、それだけでは明らかにパターンが少なく、ある程度予想され準備されてしまえば、そこから崩すのは難しくなるだろう。“極上の”というからには、敵の予想もつかない様なフィニッシュのパターンを数多く持つ必要があるだろうし、セレッソ戦で長谷部が決めたゴールなどはそれに当たる。 ウラワの攻撃陣は、それぞれ個人で局面を打開する能力に長けている。エメルソン、永井、達也、アレックス、彼らが前を向いてボールを保持していれば、それだけで相手にとっては脅威だ。しかし、止まった状態からドリブルを仕掛けて相手を置き去りにするのは、そうそうある事ではない。エメルソンにしても、そんな形を見せられるのは1試合に1回あるかないかだ。カウンターの形になりスピードに乗った攻撃が出来る時は、彼らの能力を百パーセント生かした恐怖のアタックが出来るだろうけれど、一旦ペースダウンした時に、まだまだやれる事は多い。 楔からリターンを受け、それをまた違う3人目の選手が動き出し、相手がマークを掴みきれなくなった所で余裕のフィニッシュを迎える。そんな理想的とも言える攻撃を、ウラワが見せる時が必ず来る筈だ。 今のウラワでは、今までセオリーとされてきた事は余り考えない方が良いと思う。“出来るだけシンプルに。サイドへどんどん展開して。詰まったら逆サイドへ…”。これまで、ごく普通の事と認識してきたこれらの攻撃に関するセオリーを忠実に守っていると、“極上の”攻撃は完成しない。相手のペナルティーエリア周辺で、これでもかとボールをダイレクトでつなぎ、少しでもマークが甘くなったら元々高い能力で突破を図る。一旦体勢を崩しても、後ろから津波のように押し寄せるフォローアップで、相手ボールにする事を許さない。まるで「レアル・マドリード」の様な攻撃を見せるウラワの姿を、最近少しずつ想像する様になってきた。ここまで攻撃的に人を使うのであれば、この際少々バランスを崩してでも良いから、かつてJではお目に掛かる事の出来なかったレベルまで、攻撃の質を引き上げて欲しい。ディフェンスラインに彼が戻ってきたら、恐らくウラワの攻撃的姿勢はいよいよ加速するだろうし。 ◇ディテール◇ 3.23左サイドでボールを持った長谷部は、右足のアウトサイドで2度ボールを触り、中央へと身体の向きを変えた。その視線の先には、ペナルティーアークでボールを要求するエメルソンが居て、彼は対峙するディフェンダーを左目に置き、タイミングを伺っていた。エメルソンがゴールとは逆へとバックステップで2メートル程後退した時、ディフェンダーは少し間合いを開け過ぎてしまった。そこを見逃さなかった長谷部のセンスは、やはりただ者ではない。 長谷部は、そのタイミングを待っていたかの如く、縦のスペースを切るセレッソ守備陣を尻目に右足のインサイドでボールを強くインパクトした。ほぼ無回転でペナルティアークの辺りを目指して飛ぶボールは、エメルソンが後退する事で出来たほんの僅かなスペースへと向かう。慌てたカブラルがスライディングでクリアに行くも、鼻先でそれは届かず、ゴールに正対したエメルソンの足下へ寸分の狂いもなく飛んでいく。さいスタの芝はちょっと長めだったけれど、それでも長谷部のボールはワンバウンドしても勢いが削がれる事無く、コントロールするにはちょっと強すぎるくらいの弾道。そのボールに対し、エメルソンはまるでボールを切る様な動作で右足を上から振り下ろすと、ボールはワンステップで蹴る事の出来る位置へと留め置かれた。 渾身の力で振り抜かれたエメルソンの右足を止めるのは、誰にでも不可能な事だ。彼が体勢を崩さずシュートした時点で、勝負は99パーセント決している。その場面を作り出したのは、エメルソンと長谷部の共通認識であり、それを実現するための技術だ。ボールが左サイド、ペナルティボックス角のあたりにある時、ゴール前へと突進するのではなく一歩引いてスペースを作る動きをする。言葉にすれば簡単な事だけれど、実際セレッソ戦でエメルソンが見せたプレーを目の当たりにすると、二人のインテリジェンスが共鳴したのを実感できて身の震える思いがした。 少し前に読んだ本の中に、元フランス代表監督ミシェル・イタルゴのインタビューがあった。彼は今の日本フットボールを評し「日本は既に十分なクオリティーを持っている。あと必要なのは、守備・攻撃両面でのディテールだ。日本はフットボール先進国から、ディテールを細部まで学ぶ必要がある」と語っていた。ディテール、と一言で済まされると何だか解りにくいが、要はこういう事だと思う。上で書いたのと全く同じ場面で、エメルソンと長谷部のコンビネーションと同じ選択をする選手がどの程度いるだろうか。ゴールへ向かうクロスボールを右足で上げて、それに飛び込むという考え方もある。もしくは、縦を切る二人のディフェンダーをかわしに行って、深い位置からマイナスのクロスを上げるという方法も存在する。 長谷部が左サイドでボールを保持している時点では、様々な選択肢が用意されている。そこで彼らが選んだのは、前述した通り。そしてそれは得点へと繋がった。エメルソンがゴール前で大きなディフェンダーと競り合っても勝ち目は薄いし、長谷部が二人をかわして縦へと進出出来る可能性もまた低い。彼らの中では至極当然の選択だったのだろう。自分たちの能力と相手の能力を鑑みて、判断し、それを遂行する。このプレー一つの中にも、フットボールの要素が凝縮されているのだ。イタルゴの語った“ディテール”とは、こういう事なのだと思う。スタジアムでこんな場面を肌で感じ取れると、恐ろしく楽しいのだ。 ◇報道◇ 3.22頭に来てる。そりゃあ、注目度からすれば大久保の得点が最も高いのは間違い無いのかも知れない。だけど、そりゃないだろう。昨日、試合を見終えて家に帰り着き、楽しみにするのはテレビ番組のサッカーニュース。4−2と派手なスコアで勝ったのだから、15歳の選手が先発した試合もあったけれどそれなりに報道されると思っていた。新潟より観客も入ったのだし。しかし、僕が見た限りウラワの全ゴールを放送したのはやべっちFCだけで、それも得点シーンのみの簡素なものだった。こんな事を続けていたら、いつまで経ってもJリーグは発展していかないんじゃ無いか。 間違いなく、ウラワのサポーターは日本で最も格好良い。少なくとも僕はそう思っているし、僕の周りでもそれは当然の事と認識している。格好良いだけじゃ勝たせられないという意見もあるだろうけれど、男としてやるからには格好良さも一番でありたいというのはごく自然の感情だ僕はそれを求めて、日々ゴール裏へ通っている。昨日だって試合開始直前、空気を切り裂く“We are reds!”のコールがわき起こった瞬間、コールの中に居ても身が引き締まる思いがしたし、多分外側で聞いていた人達にとっては強烈な一撃であったに違いない。フットボールに留まらず、今日本で簡単に体感できる全ての事象に於いて、あれ程魂を揺さぶられるものが存在するのだろうか。 また、ウラワのゴールシーンに巻き起こる歓喜の声だって、日常経験し得ないとてつもなく大きな感情の爆発なのだから、傍目から見たってそれがどれだけ印象的なものなのか容易に想像がつく。ウラワが存在するスタジアムには、とてつもなく大きな熱狂が存在するのだ。フランスワールドカップ前までは、確かに代表の試合でも高まる熱気を感じ取る事が出来た。しかし今日現在、人の心の奥底へ深々と突き刺さる刺激を与えてくれるのは、ウラワ以外には無い。新潟は多くの観客を集めてはいるけれど、人数の問題では無いのだ。 だから、メディアにはもっと責任を持って報道する姿勢を持って欲しい。日本にも、こんなに素晴らしい環境が現実に存在するのだ。自分たちを過信する訳でも無く、今が素晴らしいと安閑とする積もりもない。ただ、自分の目の前に屹立とする大きな刺激を、より多くの人に知って貰いたい、感じて欲しいのだ。テレビの前でしかフットボールを見る事のない大半の人は、ウラワの凄さを実感としていない筈だし、それは余りにも勿体ない。実際に現場に居れば、はまり込む事間違いなし。応援、試合、会場の盛り上がり、全て含めてかなりクオリティーの高いエンターテイメントだと思うのだけれど。 代表の試合が大事なのも解る。ただ、フットボールの文化はクラブから発信するものだ。その中で優れた選手を擁し、もの凄い盛り上がりを見せるスタジアムの風景を映し出す事をせず、何が報道なのだろう。今更言っても仕方の無い事だけれど、僕は草の根運動を続けようと考えている。今のところ、それしか方法が思いつかないのだ。 ◇ハラハラしたけど、面白かった◇ 3.21まあ、あれだけ予想通りの展開になるとは。お互いにスペースは沢山あったし、ゴール前での攻防の多い事といったら! ウラワはシュートを20本も放ち、コーナーキックも11本あった。そして得点は4。ギドが開幕前に言っていた攻撃的なフットボールは、少しずつだけれど「こんな感じなのかな」と思える様になってきた。攻撃に人数を掛ける事を厭わず、それに附帯するリスクは運動量でカバーする。今日は、その良い面が出たのだと思う。 ただ、フットボールは相手との相関関係で成り立つものだから、今日のセレッソが全く守る気の無いチームだったという事を忘れてはならない。ディフェンスラインの3人以外は攻める気持ちがとても強くて、バランスの取れない時間帯を沢山作った。ボールを保持して攻撃しようとするのは良いんだけど、そこでミスが出てウラワにかっさらわれる事多数。ウラワはとても美味しいチャンスを何度も貰った。今後も、こんなディフェンスラインの前にスカスカのスペースを与えてくれる相手ばかりだとは思えないし、タイトに守られた時にどんな崩しが出来るのかを見てみたい。 前半はちょっと重い立ち上がりで、先制されるまでは動きだしも鈍くて不安を感じずにはいられなかった。それが、得点を奪われてからはどんどん動きが良くなり、特に山田の切れ具合は凄くて、前節の不調を全く感じさせないキャプテンらしいプレーだったと思う。長谷部も後半に入ってからはどんどん良くなって、山瀬が霞む程の活躍を見せた。オフェンシブな選手として、一番欲しかっただろう得点を奪う事も出来たし、今後はギドが山瀬との兼ね合いで頭を悩ます時間が増えると思う。こんな競争だったら、いくらあっても良い。 エメルソンは今年も神である事を証明し、達也が帰ってきてからは熾烈なポジション争いが予想される永井は、今まで使う事の少なかった“高さ”を武器にゴールキックのターゲットとなり、ウイングとして攻撃に守備に奔走して新たなプレーを得た。左サイドから切れ込むドリブルが彼の持ち味なのだろうけど、右サイドでも生きるという事を証明して見せた。もしかすると、今年一番化けるのは永井かも知れない。 アレックスはまだまだフィットしていないと思うけれど、元々持っているポテンシャルは高いのだから、是非サポーターを熱くさせるプレーをもっと増やして欲しい。弱点だった左サイドのスペシャリストとしてウラワに参加してきた彼だけれど、まだその真価を見せてはいないと思う。逆に、右サイドでやりたいと息巻いていた平川が、去年と変わらず左サイドでプレーし、またその姿は生き生きとしてさえ見える。彼もまた、成長の度合いが著しい。ディフェンスではヘディングをかぶる事が結構多くて恐いけれど、平川の突破力は大きな武器になってきた。アレックスも平川に負ける事無くどんどん勝負して欲しい。ただ、今日見ていて思ったんだけれど、アレックスは自ら仕掛けるタイプなのではなく、使われるタイプなのではないだろうか。ドリブルで相手をかわしてというよりは、フリーランでスペースを突いて、そこに長めのボールを出して貰うプレーの方が好きな様に見えた。これからは、エメルソンが作ったスペースに、酒井や長谷部がどんどんボールを供給した方が、足下へ出すよりも面白い展開を作れるだろうと思う。 ニキと闘莉王を負傷で欠くディフェンスは、新しいシステムという事もありかなり厳しい戦いが続くと思う。特にカウンターを受ける場面では3人でスペースをケアしなくてはならないし、スピードに自信の無い室井はサイドに引っ張り出されると大変だろう。それでも、急造スイーパーの内舘と坪井を含め、彼らは身体を張って守っている。中盤のプレスがまだ上手く掛からないし、攻撃にどんどん人が参加して行ってしまうから、彼らにかかる負担は想像以上に大きいけれど、腐らずに頑張って欲しい。チームがフィットしていくに連れ、ディフェンスの負担も減っていくだろうし、そもそも守る時間が減る筈だ。 そして最後に。酒井は、本当に大きな補強だった。3トップと酒井を除く中盤の3人は、基本的に攻撃を主に考えプレーしている。勿論守らない訳じゃないけど、山田と平川が永井とアレックスと連携しながら攻め入ってしまうから、中盤に開く広大なスペースをケアするのは全て酒井の仕事だ。今日はとてもクレバーに、セレッソが攻めようとするゾーンを90分間休む間もなくケアし続けたし、実効的なプレーの多さに舌を巻いた。キックのミスがあったりするけれど、終わり間際に出てきた啓太が果たしてあそこまで効果的なボランチをこなせるか、ちょっと悩む。 こうして考えると、今のウラワには各ポジション毎に競争が異常な程ある。不動の選手はエメルソン・山田・坪井程度で、あとは誰が出ても全くおかしくないと思う。五輪組よりも、今のスタメンの方が2試合多く消化している分少しだけリードしているけど、これからスタメンがどんな風に変わっていくかを想像するだけで楽しい。今日のサブなんて、山岸・三上・啓太・山瀬・岡野ですよ。昨年の終盤を考えると、選手層の厚さは驚異的だ。これにニキフォロフと闘莉王も加わる訳だし。チームとしては十分に熟成が進んだとは言えないけれど、進化を期待するには十分だ。去年だったら、終了5分前で2点差ならば間違いなく勝利を確信し、We
are Diamondsを歌うのにも余裕があった。でも、今年はそんな余裕はない。今日だってかなりハラハラしながら、今歌っていて大丈夫だろうかと思いながら歌っていた。それでも、声援を送るに値するチームになってくれそうだし、今年も大きな期待を持ちながらシーズンを過ごしたいと考えている。でも、大久保に2点を献上したのだけは余計だったな。 ◇セレッソ戦◇ 3.20あっという間に、明日はJリーグ第二節。相手のセレッソはどんなフットボールをするのだろうか。前節は得点シーンしか見てないから何とも言えないけれど、今年もかなり攻撃的なチームだという事に間違いはないだろう。報道されている布陣を見ると、トップには西澤を頂点として徳重と森島が下に入る3トップ。中盤はワイドに佐藤悠介と齋藤竜を配し、久藤と布部のダブルボランチ。そしてディフェンスラインは去年と総取っ替えで、カブラル・ラデリッチという巨大な2ストッパーと、サンフレッチェから来た上村がスイーパーに入る。 五輪予選が終わり、恐らく徳重の位置には大久保が戻ってくるだろう。西澤・森島・大久保と並ぶ3トップは圧巻だし、ウラワの誇る3トップ〜エメルソン・アレックス・永井〜よりもバランスは取れているかも知れない。今期のJリーグで、前線に人数を掛けたシステムを採っているのは、ウラワとセレッソくらいだし、明日の試合は去年同様かなりの撃ち合いになると思う。ウラワはまだまだ攻守両面で連携が取れているとは言い難く、どんな内容の試合になるのか、ちょっと予測がし辛い。 セレッソはボランチに久藤を入れている所を見ても、中盤でタイトなディフェンスをすると言うよりは、ボールを支配して攻めきろうという意図で試合に臨むのだろう。前節も、人数を掛けた攻撃はかなり機能していたらしいし、ウラワは如何に中盤の攻防で勝てるかが鍵になってくると思う。新加入したクロアチア人のディフェンダー二人は、共に190センチを超える巨人で、高さのないウラワにとっては単純なクロスボールは全く無意味な攻撃になりかねない。しかし前節、名古屋はセレッソからクロスボールで2点を奪っている。ここから考えると、ディフェンダー同士の連携がまだ取れていないと予想出来るし、攻撃過多になってフリーでクロスを上げさせてしまっているとも思える。 完全に僕の想像だけれど、明日のセレッソ戦は如何にサイドのスペースを上手く使えるかにかかってくると思う。セレッソは攻撃に多くの人数を掛けて攻めてくるから、両サイドハーフの裏側には広大なスペースが出来る。またボランチの久藤はとても良い選手だけれど、布部も含めて運動量とスピードに問題を抱えるから、絶対サイドのケアが疎かになる筈だ。そこでそのスペースを上手く突いてでっかいセンターバックを引きずり出せば、ウラワの誇る高速フォワード陣がドリブルでセレッソディフェンスを切り裂くだろう。 セレッソの攻撃は確かに恐いけれど、昨年までのタイトなディフェンスを思い出して厳しくチェックし続ければ、必ず相手に穴が空くと思う。辛抱だな。今年のウラワは完全にゾーンで守っているから、こういった人数を掛けて攻めてくるチームにもきっちり対応して欲しい。特にこの2年の間にスタメンで出るようになった選手は、去年までのディフェンス意識が染みついているだろうから、受け渡しに手間取る事の無いよう。 攻撃的なチーム同士の対戦だから、予想外の出来事が沢山出てくると思うし、進化の過程でどの程度ウラワが戦えるのか楽しみだ。後半疲れが出てきたら、お互いにカウンターの撃ち合いになる事も考えられるし、メンタル面でも強さが要求される。点を取られても取り返して、今年初のホームゲームは絶対に白星を取るんだ! ◇アジア市場◇ 3.19A3でマリノスは城南一和に大敗した。日程的に厳しい中、マリノスも大変な試合だったとは思うけれど、レベルに大きな差があればこんなスコアで負ける筈はない。要は、KリーグもJリーグもトップクラスのチームにはそれ程実力差は無いのだ。日本、韓国、イラン、サウジアラビア。この辺りが、アジアの中で高いレベルのクラブチームを擁する国だ。そして最近、中国も力を付けてきている。また、カタールも日本では考えられない様な手法で、強化を続けている。 中国が伸びてきているのは、日本にとっても悪い事じゃない。去年、元ヴェルディの藤吉が中国リーグへ移籍して話題になったけれど、今後はこういった移籍も徐々に増えていくのではないかと思う。プロリーグが存在し、無茶苦茶レベルに違いがなければ、フットボールを職業として生活していきたいと考える選手達の受け皿が増える事になる訳だし、日本ではプロに少し足りないという選手が中国やシンガポールのリーグへと参戦する事で、彼国のフットボールレベルを上げる要素にもなる。アジアは極端に世界のフットボール中心地域から離れているから、特に東アジアのレベルを上げる事が、長期的に見れば日本のレベルを上げて行くことにもつながっていくのだ。またリーグ間での交流が増えてくれば、今まで長い間懸案だったスケジュールの調整も、少しずつ良くなっていくかも知れない。 間違いなく、Jリーグはアジアの中で最も優れた運営をしている。金銭的にも、恵まれていると言えるだろう。地域密着という理念も浸透しつつあるし、観客動員も高いレベルにある。ただ一つ足りないのは、周囲の国との強い気持ちを持った戦いであり、その戦いの場を提供する枠組みだ。これからは、高いレベルのリーグを有する日本が先頭に立って、東アジアのフットボールをレベルアップさせて行かなくてはならないと思う。以前も書いたけれど、各国リーグの人気が上がればそれだけ戦いは熱を帯びてくるし、それにテレビマネーも付帯してくる。市場として、魅力あるものになってくると思うのだ。 現実的に、世界クラブ選手権は欧州が納得する筈が無いし、すぐに実現出来るもので無い事は確かだ。だから、まずアジアを変えていくのが、大事なのでは無いかと思う。最近たまに夢想するんだ。埼玉スタジアムを埋め尽くす6万観衆の中、ウラワがアジアチャンピオンズリーグ決勝の舞台で躍動する姿を。 ◇選挙◇ 3.17ああ忙しい。実は、中学時代からの友人が何と市議会議員になると言いだし、本当に立候補の手続きを踏んでしまった。以前から市政に対する不満を露わにする輩ではあったのだけれど、こうやって現実的な手段に訴えるとは露程も思っていなかったから、その話を聞いた時にはまあ驚いた。今僕はその活動の一端を手伝う事になっているから、ああとても忙しい。 一応、僕はウエブサイトのデザインと、選挙用のポスター作成を手伝う事になっている。今回は補欠選挙という事で、日程的な余裕が全くなく、準備期間は驚くほど短い。因みに選挙の日付は4月11日だ。現在、僕は自分のサイトの更新はさておき、突貫工事で作業をしている。元々仕事が早い人間ではないから、この短いスパンで果たして協力者として力になれるのかは定かでは無いけれど、やれるだけの事はやろうと思う。 個人的には、こういったチャレンジ精神を感じさせる事柄は大好きだし、普通に暮らしていればまず経験出来る事ではないから結構楽しんでいる。忙しいと愚痴を言いながらも。いつだってチャレンジャーの立場は攻めていかなければならないから大変だけれど、精神的には有利だ。僕らには勝者のメンタリティーは無いから、負けを恐れずどんどん攻撃的に行きたいと思う。そのへんは、ウラワの立場と同じだな。 ◇技術、とは◇ 3.16僕は、今まで大きな勘違いをしていたのかも知れない。フットボールにおいて、日本人はフィジカルでは欧米に劣るけれど、技術的な部分やアジリティといった部分では勝っている所もあると思っていた。技術的な部分というのは、ボールコントロールだったり、単純にリフティングの巧さだったり、兎も角ボールを扱う技術はそれ程低いレベルにはないと考えていたのだ。勿論、ボールを扱う技術だからキックもそれに含まれるし、特にJが開幕してからの世代は明らかにそれまでの世代と違った技術を持つようになってきたから、所謂技術面ではそれなりのレベルに達しているのだと思っていた。しかし、その考え方は間違っていた様だ。 今日、何気なく読んでいたサッカーマガジンに、キックに関するコラムが載っていた。そこには“キックの評価が高いイギリス人”という表現があり、そこではて、と考えさせられた。イギリス人? 誠に勝手ながら、僕の中で彼らは欧州の中では最も技術的に劣ると考えていた人種である。リーグの内容を見ても、フィジカルを全面に押し出すスタイルだと思うし、確かにパワーとスピードはあり得ないほど凄いけれど、キックの評価が高いと思ったことは今まで無かった。因みにこのコラムを書いている人はフランス人のフットボール誌編集長だから、その目が節穴だとも思えないし、少なくとも僕が持つ認識などと、彼の表現を比肩する方が間違っている。そうしてこのコラムを読み進めていくと、如何に僕の考えが浅薄なものだったか思い知らされた。 多分、僕は余りにも曖昧にフットボールにおける“技術”という言葉を理解していたらしく、例えばその昔ラモスに見せられて吃驚したヒールパスとか、名波のアウトサイドキックなどを見ては、技術があるなと思いこんでいた。確かに、それは技術と呼べる一つの形である事に間違いはなく、この10年で日本人のそういった技術は進歩した。けれども、それは技術の一面でしかないのだ。そこが曖昧だった。 今はスカパーで欧州のフットボールを死ぬほど見る事が出来るから、プレミアの試合を見る事も多い。冷静にその試合内容を見ていると、確かに昔ヴェルディが見せた曲芸師の様なプレーにお目に掛かる事は少ないけれど、逆に彼らは基本的なプレーを驚異的なスピードで事も無げにこなし、目まぐるしく展開する試合を披露している。フィジカルの強さばかりに目が行っていたけれど、良く見れば確かにキックにブレがない。インサイドキック、アウトサイドキック、インステップキック、インフロントキック。プレーヤーの力量には差があるから、誰もがという訳では無いけれど、でも皆がそれなりにその場その場で最善のキックを選択し、非常にコントロールされたボールを蹴っているのだ。相手をかわす技術、相手を欺くプレーという面では劣るけれど、プレミアの選手はキックが上手かった。そんな事も判らず今までフットボールを見ていたのかと思うと、かなり気恥ずかしい。そういえば、デイビット・ベッカムもこの国の人だっけ。 きちんとコントロールされた強烈なシュート、早く曲がり落ちるクロス、地を這うグラウンダーのパス、そのどれもが高いキックの技術に裏打ちされたものだった。よく考えれば、どれも日本には全く欠けているものばかり。見比べていけば、諸外国に太刀打ち出来るものは何一つないのかも知れない。これまで何となく“優れた技術を持った日本人”というイメージがあったけれど、その認識を改める事にする。フットボール、という位だからボールを蹴る事が何よりも優先して習得しなければならない技術であり、その道はとても奥深いものだ。 ◇ビデオを見ました◇ 3.15横浜との開幕戦をビデオに録り、今日家に帰ってきてからじっくりと見た。スタンドではいつもこれでもかと応援しているから、試合の内容を詳細まで覚えていられないので、こうやって落ち着いてビデオを見るとまた新しい発見があって面白い。押し込まれている時間帯は何故生まれるのだろうか、とか、攻撃に掛かるときこんな動きがあったのか、とか色々解ってくる。 それにしても長谷部は良いな。現場で見ている時は、ちょっと入れ込みすぎて空回り気味かなとも思っていたのだけれど、なかなかどうして良い仕事を重ねているじゃないか。スピードのある3人のフォワードの下に入り、二十歳とは思えぬ堂々としたプレーぶりに僕は惚れ込んでしまった。複数人に囲まれても簡単にボールを失わないテクニックは既に身に付いているし、相手の隙間を通すパスセンスには更に磨きが掛かった様だ。 ただ、気持ちの強さからなのか、前へと急ぐ場面がまだ多く見られるから、ただでさえスピーディーなウラワのフォワードを完全にはコントロールしきれていない。彼に経験を積んだ上での落ち着きが加わったら、これはひょっとするととんでもない才能を発揮するかも。個人的にはボランチで大成して欲しいと考えていたけれど、身体ももの凄く強くなったしあのポジションでも十分やっていけるだろうと感じた。山瀬は本当にうかうかしていられないと思う。まあ全くタイプが違うから、彼ら二人の攻撃的な才能をギドがどの様に活用するかがとても興味深い。 また、今年からウラワに加わったアレックスは、どこかのインタビューで「アウェーなのにホームで戦っているみたいだった」などというサポを喜ばせる発言をしていた。横国ではピッチが遠いからエメとアレックスと坪井の区別がつかなかったのだけれど、テレビで見ると実に表情豊かにプレーしていて楽しそうにも見えた。また、エメとアレックスは味方に要求する仕草も大げさだから、非常に良く目立つ。 この試合中、エメはサポーターを煽ってすぐに得点を奪い、ウラワの神である事を再認識させてくれた。恐らく、アレックスのキャラクターはエメと近しいと思うし、応援すればする程のってくるタイプの選手だと思うので、僕らは早急にアレックスのコールを作らなくては。エメ同様、アレックスも調子に乗せればこれ程恐い選手はいないから。 ◇サポート◇ 3.14ボーイズを始めとして、試合直前のゴール裏は開幕を待ち望む心踊る状態で、それはウェーブを要求したり、それに対してブーイングをする動作に現れていた。ウェーブや横浜くそったれコールの善し悪しは置いておくとしても、普段あれだけ楽しげなウラワのゴール裏を拝む事はなかなか出来ない。それだけ新たに迎えたシーズンに対する期待感が大きいのだと思う。結果は引き分けと、アウェーの開幕戦という事を考えればまずまずだと思うし、新しいシーズンを例年と変わりなく迎えられた事を心から嬉しく思う。 ウラワのゴール裏はアウェーでありながら何時もと変わらぬサポートを見せ、リーグで最も“格好良い”スタンドの風景にも変わりが無かった。もうJリーグは12年目のシーズンを迎える訳だけれど、何時まで経ってもウラワを脅かす存在が出てこない。一体他のクラブは何をやっているのか。自画自賛する気は無いけれど、チームとしての強さは兎も角サポートの質ではウラワが二位以下に圧倒的な差を付けて突っ走っている。その差は、縮まる事もなくどんどんと開いて行っている様にすら最近感じるのだ。今は新潟が多数の動員で評判になっているけれど、それがどうしたというのだ。人数の問題ではない何かが、大きな溝となって横たわっている。ウラワとその他のクラブの間に。 今日、友人の結婚式があり、その二次会で横浜サポの人と知り合った。彼も昨日の試合に行っていた様で、僕と同様嗄れた声をしていてサポーターを感じさせる人だった。初対面だったけれど、とても感じの良い人だったからフットボールの話で盛り上がり、その内容は勿論昨日の話になっていった。試合の内容では、お互いに褒められたものでは無かったという共通認識があったため、それ程込み入った話にはならなかったのだけれど、話の途中気になる発言が彼の口から発せられた。 「やっぱり、ウラワの応援って凄いですよね。昨日だってゴール裏が揺れてましたよ。声も大きいし、ちょっと恐いイメージもありますけど」 彼だって、歴とした横浜サポーターであり、声を出して応援している人なのだ。それなのに、こんな認識になってしまう。僕は自分がコアなサポーターだとは全く思っていないし、ゴール裏だってなるべくボーイズから離れた所へ場所を取る事にしている。声は出すけれど、90分間飛び跳ね続ける自信が無いから。多分横浜サポの彼と僕は、立場的にはそんなに離れた場所には居ない筈だ。それでも、認識の差は大きい。 僕みたいな緩い人間が陣取る場所でも、周囲の人達はずっと声を出している。やはり飛び跳ねている人は中心部に比べてかなり少ないけれど、それでも皆声を出す事がサポートになると理解して声援を送っているのだと思う。どこのクラブだって、サポートの中心部に居る人達はそれなりにパワーを使っているだろう。ウラワとその他のクラブを大きく引き離している大きな要因として、コアサポを囲む集団の試合に対する臨み方に、その理由があるのではないかと思う様になった。 ウラワの場合、その歴史上からもゴール裏は声を出して応援する場所だという認識が広く行き渡っている。時に地蔵問題などというのが出てくる事自体、それを証明している。僕はゴール裏がそういう場所だと思っているし、喉が潰れようが構わないという気持ちを持って試合に臨んでいる。罵詈雑言を言い放つ事だって辞さない。如何に相手を威嚇して何時も通りのプレーをさせない様にするかを常に考えているし、如何に味方を鼓舞して百パーセント以上の力を発揮させられるかを常に考えている。フットボールの試合を楽しもう等という気持ちは毛頭無い。そこにあるのは、ウラワが美しく勝つために何が出来るかという事だけだ。 他のクラブがどうだかは知らないが、少なくとも僕の周囲に居るサポーター方々は、表現の違いはあれど皆同じ様な気持ちで試合に来ていると思う。昨日の横浜だって、サポーターの人数にはそれ程大きな違いは無かった。だから、サポートの質に差が生じるのは、そこに居る人達一人一人が持つメンタリティーの積み重ねによってなのだろう。いいじゃないか、サポーター“は”日本一と言われても。それがウラワの誇るフットボール文化なのだし、声援を“形”にして表現できる事の喜びは、他の誰にも渡したくない。 ◇引き分けは妥当な結果◇ 3.13本当に、負けなくて良かった。ギドの言う通り、どっちが勝ってもおかしくない内容だったと思うし、引き分けは妥当な結果だろう。今日ウラワが見せたパフォーマンスに対して、見方は様々あると思うけれど、僕は概ね好意的だ。前評判の悪さからすれば、そんなに悪く無いじゃないか、というのが正直な感想になる。 戦前、ユサンチョルと波戸がいないから右サイドバックをこなす事が出来る選手がおらず、僕はマリノスがかっちりとした3バックで来ると思っていた。そして、佐藤とドゥトラが両サイドをそれぞれ担当するものだと考えていた。しかし、蓋を開けてみれば清水を中盤で使い、ディフェンスは田中隼磨を右サイドに置くいつも通りの4バック。ウラワはサイドに人数を掛ける戦術を採るだろうという判断からだろう、横浜は相手に合わせてきた。一方ウラワは、開幕前から噂されていた3−3−3−1と言えるシステムで戦いに挑んだ。 立ち上がりからウラワはとても積極的だったし、チャンスもそれなりに作り出す事が出来た。攻守に噛み合わない悪い時間帯に、かなりの選手がボールウォッチャーになる事があったり、修正点も沢山ある。ただ、新たな監督の下新しいシステムを導入してから初めての公式戦という事を考えれば、今日の内容・結果共に及第点を与えて良いのではないかと思う。前から書いてきた様に、今のウラワが目指すフットボールは去年までのものと比べて非常に複雑であり、その完成度を上げるのにはとても時間が掛かる。だから僕は今日の試合を見て、選手達が混乱する場面もありながらも自分たちで修正しながら試合を進めた事に、少なからず安堵感を抱いている。 今日は、中盤の3ボランチというのか、山田・酒井・平川が攻守に振り回される事が多かった。また逆に、平川はアレックスとのコンビで良い突破を何度も見せた。やはり前線に多くの人数を掛けるシステムだから、高い位置からのプレスが掛からないと中盤の彼らにもの凄く大きな負担が掛かってしまう。攻撃面でも中央とサイドの両方で戦わなければならないから、このポジションの3人にはスタミナと高い戦術眼を求められる。今日はチーム全体のプレスの掛かりが悪かったから、彼らが苦しいプレーを強いられる事が多かったし、それが永井やアレックスを上手く活用出来なかった事につながっている。次節以降、どう修正していけるか楽しみだ。 恐らく、ギドとエンゲルスは今日のシステムを変える事はしないと、僕は考えている。五輪代表が戻ってきても、選手の入れ替えだけになるのではないか。ウラワの首脳陣は、選手達の持つポテンシャルを信じている様だし、それが無ければこんな攻撃的な形は使わない筈だ。現実的には、修正しなくてはならない問題点は多々あるし、今後も上下を繰り返しながら進んでいく事は容易に想像がつく。それでも僕は、この攻撃的なフットボールを支持する事に決めた。攻められて押し込まれても反攻していくチームの姿勢に、共感する事が出来たから。何とかギドとエンゲルスが目指す攻撃的なフットボールが、完成に近づく事を祈っている。 最後に、愚痴を。マリノスには心底がっかりした。あれをフットボールと言って良いのだろうか。確かにセットプレーは盤石だしとても恐いチームだとは思ったけれど、その内容はまるで高校選手権の国見の様だった。ひたすら久保と安貞桓を目がけてロングボールを蹴り続け、彼らの高い能力によって得点を狙う。あれが昨年の完全優勝チームだと思うと、とても悲しい。上川のファンタジスタっぷりは今に始まった事じゃないからどうでも良いんだけど、あんな糞みたいなマリノスのフットボールに負ける事だけは絶対に許せなかったから、今日は負けなくて本当に良かった。◇いよいよ◇ 3.12昨日は忘年会で終電過ぎまで居酒屋に。飲めない酒をひたすら飲み続け、果てや焼酎にまで手を出し、今日の午前中はどうにもならなかった。それでも溜まった仕事は次から次へとやってくるから逃げだす訳にもいかないから、何とか必死にこなしていって午後8時には会社を出た。ちょっとだけ来週に残した仕事もあるけれど、もうそんな事はどうだって良い。だって明日は4ヶ月間待ちに待ったシーズンの開幕なのだから。 という訳で、明日は朝から並びに行きます。僕の最も苦手なジャンル、早起きが待ってますからもう寝ます。勝利を夢見ながら。 ◇PRIDE OF URAWA◇ 3.10去年は、引いた相手に手も足も出ずスコアレスのドローに終わる試合が幾つかあった。また、カウンターを食らい負けてしまう事だってあった。それでもリーグで上から6番目に多くの得点を奪ったし、大量得点の試合も多かった。その真骨頂が、ナビスコの準決勝と決勝だろう。久しぶりにウラワが大勝する試合を何度も目にする事が出来たし、ある意味セカンドディビジョンに落ちてズタズタに切り裂かれたプライドを、少しだけ取り戻す事が出来たシーズンだったと思う。 思えばJ元年、日本リーグの名門だった筈のクラブはリーグ一のお荷物球団に成り下がっていた。試合をすれば負けの繰り返しで、初年度のファーストステージは3勝15敗という信じがたい成績で終えていた。セカンドステージは多少勝ち星が増えたとは言え、それでも5勝13敗と大きく負け越した事に変わりは無かった。ウラワがフットボールのメッカとして、プライドを取り戻したのはホルガー・オジェックが就任した95年。ギドを中心とした堅い守りと、福田・岡野をバインが走らせる高速カウンターアタックが面白い様に決まり、ウラワはプロリーグになって初めて勝つ事の喜びを知った。 その後、ウラワが激しい上下運動を繰り返したのはご存じの通り。ちょっと強くなったかなと思えば、また急に弱くなる。こうすれば勝てるのではと、少しでも知識がついたかと思うのだけれど、その翌年になるとまた勝ち方を忘れてしまう。この11年間、いつもそんなウラワを見続けてきた。だからといって嫌いになるかといえばそんな話じゃないけれど、いつまで経っても安定する事の無い僕らのクラブは、いったい何時になれば本気で強いチームになってくれるのかと考えているのもまた、事実だ。 去年は、ウラワを見てきて初めて「継続は力なり」という格言に納得がいったシーズンだった。誰もが、去年のセカンドとナビスコで突っ走るウラワの姿を想像だにしなかっただろうし、僕だってあそこまでチームが進化するとは思ってもいなかった。エメルソンは大人になり、達也が大ブレイクし、内舘が遅咲きの春を満喫すれば、外国籍選手は全員チームの為になる仕事をする。あれだけ安定したシーズンを送ったのは、オジェック時代以来ではないだろうか。2年間オフトの元で成長を見せたチームは、今年また新たな第一歩を踏み出す。 今までの経験から、こういうシーズンに対して不安がるのは仕方の無いことだ。だから僕は去年オフト解任の報を聞いた時とても憤りを感じたし、また同じ事の繰り返しになるのではないかという危惧を抱いた。その心配は今でも無くなってはいないけれど、過去のシーズンとは極めて異なる事象がある。それは、クラブもサポーターも全て含めた“経験”だ。ウラワは去年初めてカップウイナーとなった。初年度から在籍するチームとしては少なからず遅い体験だったけれど、それでもあれだけ勝利が嬉しいものだとは去年まで知らなかった訳で、恐らくリーグを勝ち取った時に感じる喜びはまた格別だろう。ウラワは、それを求め得る存在となった。 もう、アップダウンを繰り返すのは止めにしよう。僕らのプライドは、11年間で一度きりのカップウイナーで満たされるものではない。今まで経験した負の遺産を全て振り払うには、まだまだ全然勝利が足りない。ウラワのプライドを再び輝かせる為に、貪欲に勝利を目指す。今年は、そんなシーズンにしたい。 ◇決意表明◇ 3.9開幕まであと数日、今年もまた辛く楽しい時間がやってくる。今年は、監督が変わり新しい選手も大幅に加入した。社長も変わったし、練習場も新しく綺麗になった。代表選手も増えた。メディアの注目だって、ちょっとあり得ない程大きなものになっているし、チームとしても選手個々としても、ウラワとしては未体験の領域で開幕を迎える事になる。 世の中には“ブーム”というものがあるから、メディアにより多く取り上げられる時もあるだろう。全く見向きもされなくなる時だってあるだろう。今は五輪代表の達也がどんどん注目を集める存在になって行っているし、これで最終予選を勝ち抜いて本大会でもレギュラーで活躍する様な事になれば、彼は一躍時の人になってしまう。今は平山、平山と大騒ぎのテレビ局だって、その矛先をいつ変えるか分かったもんじゃない。また逆に、最終予選日本ラウンドでミスをして、もし日本がオリンピックに出られないような事になれば、あっという間に世間は戦犯として扱うだろう。 だから、僕は惑わされない。僕は何時でも、ウラワが美しく勝利する事を心から願っているし、出来る限りのサポートをこれからも続けて行く。クラブや選手たちが、世間から様々な評価をされたとしても、僕の中での判断は揺るがない。ウラワがどんどん強くなろうが、今までより巷で騒がれるチームになろうが、そんな事は関係ないのだ。僕の中ではいつでもウラワが一番だ。今までも、これからも。 今期も、気持ちは一つ。“ウラワ至上主義” ◇美しいフットボール・勝つフットボール◇ 3.8フットボールには十人十色の見方があると思うし、人それぞれ好きなフットボールがあるだろう。とことんまで勝利を追求し、それ以外は全く求めない人。限りなく美しいフットボールが好きで、結果よりも内容を重視する人。美しいフットボールと言っても、またそれも人によって判断が異なるだろうし、それだけ様々な視点が存在するという事だ。 僕は、美しいフットボールが好きだ。僕が美しいと思うフットボールを簡潔に言うと、グラウンドを広く使い、なるべくならウイングプレーヤーを擁し、グラウンダーのパスを多用して高いポゼッションを誇り、多数のプレーヤーがボール以外の所でもプレーして技で相手を崩し、尚かつドリブルでは1対1の局面で勝負し、勝利して欲しい。出来るだけ攻撃の時間を長くして、ディフェンスの事など考えなくても良い様なフットボールであれば、この上無い。だから、こんなフットボールを見られるのなら、それ程結果にはこだわらないし、お金だって沢山払う。逆に言えばこんなフットボールを完成に近づけられれば、そりゃ簡単には負けないだろうし。 だから、という訳じゃないけど、僕は岡田監督がどうしても好きになれない。彼がとても優れた能力を持つ監督なのは実績を見れば明らかだし、その能力を否定する積もりは全くない。僕らがJ2で死ぬほど苦しめられた事も、去年横浜が完全優勝したのも、全て岡田監督によるところが大きいし、それは納得している。それを踏まえた上で、好きになれないのだ。彼は全く論理的だし、相手に勝つためにはどうすれば良いかという事を常に考えていると思う。 中澤、ユサンチョル、久保などがゴール前に立ちはだかるセットプレーは相手チームにとってみれば脅威以外の何者でもなく、そこへボールを供給するのは佐藤由紀彦・ドゥトラというJリーグ屈指のプレースキッカー。相手と自分の戦力を鑑みて3バックと4バックを巧みに使い分け、汗かき役の遠藤をボランチに置いて攻撃的な選手には奥というバランスの取れる選手を使う。センターバックには屈強な日本人を揃えて、サイド攻撃でも前述のプレースキッカー二人が精度の高いクロスをがんがん上げる。中ではそれを待ちかまえるターゲットマン久保と、こぼれを虎視眈々と狙う安貞桓。戦術といい、補強といい、全てが論理的に導き出された回答を元にしながら、強化が進められている様に見える。 彼はスカウティング能力にも特筆すべきものがあるらしく、相手のフットボールを嫌と言うほど詳細にわたり調べ上げて、長所短所を暴き出しては自分たちが有利な試合運びが出来る様に選手へと通達するらしい。だからこそ、昨年の横浜にあれだけの成績を就任1年目ながら与えられたのだと思うし、本当の意味で力のあるプロ監督だと言えるだろう。 ただ、僕はマリノスのフットボールを強いなと思った事はあっても、美しい、素晴らしいと思った事は一度もない。怖さは感じるけれど、もう一度見たいと思った事は無いのだ。至極冷静に且つ狡猾に、勝つ事のみを考えた冷酷なフットボールというイメージしかない。個人的に余り好きになれないのはその辺りに理由があり、だから彼らに負けると正直とても頭に来る。ウラワが負けるのはいつだって悔しいけれど、それが例えば磐田に負けるのとでは、僕の中で大きくその意味は変わってくるのだ。僕にとってはマリノスとの戦い、否、岡田監督率いるチームとの戦いこそが“絶対に負けられない戦い”なのだ。開幕戦は是非、攻撃的で美しいフットボールによって横浜を粉砕して欲しいと、今から願っている。熊谷での戦いを見てニヤリと笑ったらしいあいつの顔を、苦渋に満ちた表情に変えられる様。 ◇送る会◇ 3.7昨日の夕方、駒場で試合がある訳でも無いのに、何故だか僕は浦和の駅を降り立ちそごうの前を抜けて県庁方面へと歩いていた。ボルテージに行くでもなければ、須原屋へ行く訳でも無い。県庁通りをも抜けて、一路商工会議所へ。そう、昨日はテレビ埼玉「GGR」のアシスタント、大西友子タンを送る会が開かれたのだった。 個人的に大きな思い入れがあった訳じゃないけれど(ここ重要)、ウラワに関わった人が番組を卒業していくのだから、そういった会があるのなら、そしてそれにお呼ばれされたら行くしかない。清尾さんや豊田さんも見えられたその会は、友子タンを囲んで和やかに進んでいった。 こういった会では、普通拍手なども小さくなりがちだし、誰かが挨拶した後起きる拍手は、すぐに小さくなっていって自然消滅するのが通例だと思うのだけれど、そこはやはりレッズサポの集まり。小さくなっていくどころか、みんな顔より上で拍手して、その音の大きい事と言ったら。 また、会の途中で色んなコールが巻き起こり、室内だと言うのにちょっとした盛り上がりになった。清尾さんの名前をもじってエメコールを真似て「じゅ〜ん〜」等と言ったり、ただそれだけの事なのに段々と気分が盛り上がってきて戦闘モードへと切り替わってきた。はじめは室内だし、ちょっと気恥ずかしい気分もあったけれど、吹っ切れて声を出してからはもう既に開幕モードへと突入。より横国が待ち遠しくなってきた。 また、この日は豊田さんも見えられるから、行く前に久しぶりに本棚から「生還―浦和レッズJ2戦記」を引っ張り出してきて、行きの電車の中で読みふけった。本当に久しぶりに読んだから、結構細かい所は忘れていて非常に楽しく読む事が出来た。大分サポーター寄りになる彼の文章だけど、こういった開幕前の気分が高まった時に読むとどんどん引き込まれていく。ざっと読み通そうと思っただけなのに、じっくり読んでしまって危うくウラワを乗り過ごす所だった。 そんな訳で、新しいサポの知り合いも出来て、結構楽しい休日でした。 ◇原型◇ 3.6鈴木啓太と今野泰幸は、技術的にフル代表のボランチよりも劣るかも知れない。美しいサイドチェンジのパスを出す事も少ないし、はっとさせられるスルーパスを連発出来る訳でもない。それでも彼らには、90分間フルにボールを追い続けるだけのスタミナと、どんな相手にも負けないフィジカル、そして何より決して諦めないメンタルを持っている。 前線からのプレスが厳しい現代フットボールのボランチには、ゲームをコントロールする為の技術、即ちレジスタとしての能力が求められる事が多い。攻撃的ミッドフィルダーが、きついプレッシャーの中所謂ゲームメーカーとして機能しなくなってきてから、その傾向はどんどん強くなってきている。多少フィジカルで劣っても、ボールを落ち着かせる事が出来、長いボールで局面を打開できる選手がボランチに選ばれる事が多くなった。 個人的にそれは全く正しい事だと思う。例えばディフェンスラインの前に名波が居れば、彼がフリーになる事が多いからそこにボールを預けやすくなるだろうし、実際ジュビロは名波を起点に攻撃を仕掛ける事が本当に多い。諸外国に比べて身体の強さが劣ると言われる日本だから、目指すフットボールが相手とのコンタクトを極力避けるパスゲームになって行くのは当然なのだろうし、その為には技術的に高いボランチは必須だ。僕もそう信じて来た。 でも、昨日行われた五輪代表の試合を見て、ボランチの“原型”とでも言うべきものを、僕はUAEの地に見つけていた。中1日で行われる3試合全てにスタメンフル出場しながら、誰よりも動き、走り、相手のボールを追い続けて奪い続ける日本のボランチ二人。間違いなく体力的には厳しい筈なのに、それを全く感じさせず、どこからでも相手のボールへプレッシャーをかけ続ける。昨日目立ったのは、勿論得点を演出した達也や高松だろうし、勝利を引き寄せたのは攻撃陣による所が大きいのだろう。それでもあれだけ緊迫した試合展開の中、相手の汚いプレーを意に介さず冷静にボールを追っかけたボランチの二人が、チームに与えた影響は結構なものだと思う。 僕は技術の高い選手が好きで、ボランチの選手がゲームを組み立てる事に対して異論を挟む積もりはない。ただ、それが出来る技術を持っている選手だからといって、ボランチとしてやるべき仕事を忘れてはならないと思う。第一の仕事は、昨日二人の五輪代表ボランチが見せた、必死に冷静に、ボールを追い続ける事だと思う。真の意味でのワイパーとして働く。これをやってから、次の仕事に取りかかるべきなのじゃないかと思うのだ。 ◇トライ&エラー◇ 3.4今日のさいしんカップで、ウラワの不出来が明らかになったらしい。個人的には試合を見ていないから何も言う事は出来ないけれど、現地に行った仲間とハーフタイムに電話で話した限りでは、選手間の連携が拙く余り良い状態ではないらしい。また、ネット上に溢れる情報から判断しても、現状ウラワが完成度の高いフットボールをしている訳ではなさそうだ。開幕を直前に、問題を抱える我がクラブ。ただそれも、言ってしまえば予想の範囲内に収まる事だし、今更慌てふためいても仕方がない。 チームの骨格となるセンターラインの選手は五輪代表に選出され、未だまともにチームで練習をしていない。コーチにエンゲルスという経験豊富なブレーンを用意したとはいっても、監督はプロのチームを率いた経験が全く無いずぶの素人。そして尚かつ、昨年まで慣れ親しんだシステムを変更し、極端だったマンツーマンディフェンスを止め、ある程度受け渡しをするディフェンスシステムを採用している。これだけの要素がありながら、いきなり開幕から安定した力を発揮し、勝ち続ける事を予測する方が困難だ。 ギドが今試している3−3−3−1というシステムは、まあ数字の羅列では3−4−3でも良いとは思うけれど、去年までのシステムに似ているようでいて、全く違ったものだ。一番の大きな違いは、トップからディフェンスラインまで各ラインに3人ずつが並び、それぞれ縦の関係を築く事。そして、ギドはポジションチェンジを良しとしているから、特にサイドでは縦のポジションチェンジが頻繁に行われるだろう。去年、山田と平川が各々一人でサイドを切り盛りしたのとは全く異なる。 また、4バックに4人の中盤であれば、サイドには2人ずつ人員が配置される事になるから、彼ら同士のコミュニケーションが取れれば良い。しかし、今のウラワがやっているシステムだと、更にもう一人加わって3人でのコミュニケーションになるから、そこが噛み合うのにとても時間が掛かる。果たしてギドがこのシステムをずっと使い続けるかは解らないが、もし続けるのなら僕らは相当長い時間我慢をしなくてはならないだろう。 以前も書いたけれど、同じようなシステムをオランダのアヤックスやスペインのバルセロナが採用していて、やはり彼らもこのシステムをものにするのにそれなりの時間を費やしている。両方のクラブで指揮を執ったルイス・ファンハールは、3−4−3システムの信奉者であり、グラウンドを最も効率よく占拠出来るのはこのシステムをおいて他ないと言っていた。ピッチにバランス良く選手を配置でき、特に攻撃の際パスを出す角度がとても多いから、ポゼッションしながら攻撃的なフットボールを繰り広げるのには格好のシステムなのだ。 しかし、ことディフェンスになると問題は簡単でなくなる。元々後ろに人数を掛けて守る考え方はこのシステムには無いし、恐らくディフェンスラインの3人の内サイドの選手は攻撃の時広く開いたポジションを取るだろうから、本当に決まり事を増やしてこなしていかないと、恐ろしくプレスの掛かりが悪くなる。根本的に、トップ近辺に3人の選手を並べるのは攻撃的に行くという証であるから、守るための守備はしなくなる。あくまでも、高い位置で奪ってまた攻撃を繰り返す、そういった哲学になるだろう。だから、このシステムを扱うときには必ず相手を攻撃面で上回らなければならないし、そうしない限り勝利はやってこない。 最近のギド発言を見ても、彼が守勢に回ったフットボールを好まず、失点を恐れずに果敢に攻めるフットボールを志向しているのが垣間見え、エンゲルスが今まで見せたそれと併せて、今年のウラワが目指すフットボールが見えてきそうだ。昨年までとは180°変化した、ウラワのフットボール哲学。選手のタレントを見れば、その選択はあながち間違ったものとは思えないけれど、それがある程度形になるまで、チームは迷走を続ける様に見えるだろう。もし五輪代表が本大会出場を果たせば、セカンドステージが始まっても彼らは合流出来ない。やもすると、チームが形作られるまでに想像を遙かに超える時間が必要かも知れない。逆に、相当早くフィットするかも知れないし、それはやってみなければ解らない。 ただ一つ言える事は、エラーを恐れずにどんどんチャレンジしていく事だろう。変化する為には、時間も痛みも必要だ。そして、僕らは時間がかかる事を納得しなくてはならない。新しい監督に、新しい選手、そして新しい戦術。これらが上手く噛み合うまで、じっくり腰を据えて応援しようと考えている。 ◇つまらん事の繰り返し◇ 3.3中学に上がり、始めて母国語以外の言語に触れ、そして成績はすこぶる悪かった。2年生になっても成績が上がる気配は一向に無く、意味の分からない無機質としか感じられない文字の羅列を見て、頭を痛めるしか無かった。そんな僕に転機が訪れたのは、2年生がもうすぐ終わりになろうかとしている頃だった。このままでは高校進学も覚束ないと、元来の脳天気な自分でも少しずつ焦燥感を持ち始めた。どうにかしてこの頭に来る外国語の成績を上げたいと、方法を模索し始めたの僕に変化をもたらした。 今にして思えば、その時取った方策は些か陳腐なものだったけれど、それでも効果は絶大だった。僕にとっては全く意味のない存在だったアルファベットを自分のものにする、単純だけれど単語をひたすら覚えるというとても単純なものだ。所謂“出る単”を買ってきては、赤ペンを引いて緑色の下敷きで隠して意味を覚え、ノートに何回も繰り返し単語を書き散らしスペルを身体に染み込ませる。何度も何度も、本当にひたすら繰り返し続けた。周りには教科書を見るだけでいとも簡単に単語を覚えていく奴もいたけれど、そんな能力の無い僕にはこうした単純作業をやり続けるしか方法が無かった。 しかし、そんな単純作業でも続けていけば効果は現れるもので、それまで底辺を彷徨い続けていた英語の成績が、少しずつだけれど向上を見せたのだ。面白いもので、それま????慴r??J????で全く意味をなさない筈だった文字の羅列は、徐々に文章として捉えられる様になり、試験で文中の四角を埋めなさいという類の問題に正解できるまで成長していった。まあ、だからと言ってトップクラスの実力まで伸びたかと言えばそんな事はないのだけれど、若い時代の柔らかい脳と併せて、僕は何とか進学する事が出来た。 何とか大学までやってきて、第二外国語という授業が存在するのを始めて知り、次のワールドカップがそこで行われるからという単純極まりない理由で僕はフランス語を選択した。この時、僕は少しだけ自信があった。中学時代に覚えた、外国語を少しでも身近にする方法があったから、今度も同じ方法で勉強すれば何とかなるのでは無いかと思っていた。しかし、その自信は脆くも崩れ去る。何故だか解らないけれど、何度ノートに単語を書いても、赤ペンで消した単語帳を見ても、単語が全く頭に入って来ないのだ。中学の時より、集中力が足りなかったのかも知れない。大学は遊びに行くところだと、緩い気持ちでいたのも原因かも知れない。でも多分、一番大きな理由は、年齢にあったのでは無いかと考えてる。何事も、吸収力は若ければ若い程あると思うし。 そんな事を思いながら、今日ナンバーに載っていたメキシコ五輪銅メダリスト・釜本氏のコラムを読んだ。「今のサッカー選手は、ボールを蹴るという最も基本的な練習が足りない。それも若い時に」。自分の経験と照らし合わせて、何となく実感出来た。 ◇熱い奴◇ 3.2今日、取引先のフットボール好き(市原と甲府が好きと公言する小倉・レフティーモンスター・隆文マニア)と商談している最中、話は仕事のそれからどんどん逸れていき、先日行われた五輪代表のバーレーン戦になった。最初はみんな動きが重かったね等という当たり障りのない話に終始していたのだけれど、彼も熱を帯びてきて、話は嫌な展開へと流れていった。彼は僕が熱きウラワサポだという事を勿論知っていて、その上でウラワの事を小馬鹿にする事が大好きなちょっと楽しい人なのだ。馬鹿にする割には、ウラワの事を良く知っているし、嫌味じゃないから特に嫌な気持ちになる事はないんだけれど、反論するのが結構面倒臭い。 「ウラワは何でゼリッチを首にしたの?」「闘莉王は細かいミスをたくさんするよ」「彼を3バックのセンターで使うのって恐くない?」「ウラワのディフェンスは大丈夫なの?」 と、嫌な流れは的中し、ひとしきり闘莉王を馬鹿にする発言が続いた。ま、この人の話はいつもこんなだから、ある程度聞き流した所で闘莉王の高さを強調しつつ反論すると、「ゼリッチの方が背が高く無かったっけ?」と返された。よくご存じで。僕はまたこの終わらない議論を続けるのが面倒臭くなっていたから、あの大きな声が周囲に与える影響は大きいですよ、などと無理矢理結論付けて、その場を終わらせた。 多分、彼の言う通り、闘莉王は経験を沢山積んだ完成された選手では無いのだろう。それは、五輪代表でのプレーを見ていても感じるし、まだまだ勉強しなくてはならない事が多いと感じる。今年のウラワでも、彼の所から失点する事だってあるかも知れないし、細かいパスミスや後ろを顧みないオーバーラップで冷や冷やさせられる場面は想像に難くない。特に、去年までウラワのディフェンスラインをコントロールしていたネッドは、リベロとして恐ろしく能力の高い選手だったし、彼の代役がいきなり務まる程フットボールは甘くないと思う。ウラワがあれだけ安定したポゼッションフットボールを繰り広げられたのはネッドの功績に寄る所が大きいと僕は考えている。 ただ、闘莉王に対してネッドの替わりをやって貰おうとはクラブの首脳も考えている筈もなく、元々プレースタイルが全く違うのだ。ネッドはとても豊かな経験を持った怪我がちの外国籍選手。給料だって高かった。彼は、求められるプレーの質がはなから高いのだ。それに対して闘莉王は、あんなオヤジみたいな風体をしているけれど、まだ23にもならない若造なのだ。フットボールの世界では、22才といえばもう中堅どころなのかも知れないが、ことディフェンスに関して言えばこの年齢ではまだまだ。これからミスだって沢山するだろうけれど、それが経験値となりより良いフットボーラーへと変化して行く所なのだ。また、彼の様に周りへあれだけ声を出しながら激しく要求する選手は、自分が一番大変になるのを良く解っている筈だし、それが彼自身の成長を早くするだろう。そしてなにより、今年のボスはとんでもない経験を持つ人だ。 去年までと違い、僕らは吃驚する事が多いと思う。試合中、後ろに居る筈の選手が相手ゴール前に居たり、ちょっとポジショニングを誤って相手選手をフリーにさせたり、やる気のないプレーをする山田に対して怒号を浴びせるシーンが見られたり。今まで僕らが見たことの無いような光景が、繰り広げられるだろう。それらが全て正しい訳じゃ無いし、間違った方向を向く事もあるかも知れないけれど、僕は若き熱いディフェンダーの成長を見守る事が出来る、シーズンの始まりを今か今かと心待ちにしている。 ◇恐るる無かれ◇ 3.1僕たちのクラブは、今どんどん大きくなろうとして成長を続けている。どこへ向かっているのか、果たしてどこへ向かうべきなのか。 間違っても、Jで中位を彷徨くクラブで良い筈がない。そんな所を目指している訳がない。それなら、鹿島の様にどんな手段でも駆使して勝つために貪欲になるクラブを目指すのか。それとも、磐田の様に綺麗なフットボールを見せながら、尚かつ勝ち星まで欲するクラブなのか。多分どちらも違うだろう。ウラワが目指すフットボールクラブは、そんな小さな目標で満足できる筈がないのだ。今のJで比類出来るクラブなどある筈もなく、ウラワ????慴rは僕の想像出来る範囲を超えた所を目指して歩き始めている。 ウラワのゴール裏には、日本一のサポーターがいると言われて久しい。個人的には日本一どころでは無いと考えているけれど、まだそれを言う時期ではないからそれは良い。ただ、ウラワが持つサポーターを含めたフットボール文化が、日本の中で図抜けた存在なのは明白だ。誰よりも格好良く、誰よりも美しく。自分の応援するクラブに対して美辞麗句を並べ立てるのは、日本人的な美徳からはかけ離れているかも知れないが、そんな事は僕にとって無意味だ。ウラワには、優れたフットボール文化が存在し、今までなかなか勝利に恵まれなかったチームは、今後もっともっと大きくなっていく。 物事が変化を起こす時には、必ず何らかの影響を周囲に与える。今年のウラワは、間違いなく今まで経験した以上の変化が起きると予想出来るし、その胎動は少しずつ確認出来始めている。クラブがより大きなものへと変わっていけば、チームに対する勝利の欲求は想像も出来ないくらい肥大していくだろう。スタンドにおいてもファン層の変化が起きるかも知れない。これだけ代表選手を多く抱えるのだから、チームの成績は高い所で安定しなくてはサポーターを納得させるのが難しくなってくるし、全国区の選手が増えてくると、今までウラワの試合を見たことも無い様な人々がスタジアムへ押し寄せる。聖地と呼ばれたスタジアムでの試合も減って行くだろう。 人は、多少の痛みを伴う変化を受け入れるのに時間が掛かるし、積極的にその変化を受容しようとするのは希な事だ。ただもう、ウラワは大きくなるための一歩を踏み出している。これから訪れるだろう今までと異なる様々な現象を、僕らは受け止め、伸びゆくクラブと一体になって変わっていかなくてはならないと思う。そう、ウラワが世界に輝く時まで。 |